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2015年2月22日 (日)

拝啓 宮崎駿 様

拝啓 宮崎駿 様


フランスの多くのメディアや観客が最高傑作と評価した「風立ちぬ」に感動してから、早一年。まさかこのテーマであなたに反論する日が来るとは、夢にも思っていませんでした。


2月16日、貴方はあるラジオ番組で風刺画についてこのように述べました。


異質の文明に対して、崇拝しているものをカリカチュア(風刺画)の対象にするのは間違いだ

まずもって自国の政治家にやるべきであって、他国の政治家にやるのはうさんくさくなるだけ


http://www.47news.jp/CN/201502/CN2015021601002233.html


貴方の口からこのような発言が出るとは信じがたく、他のニュースサイトの関連記事をすべて確認しましたが、それは紛れもない事実でした。


その後、フランスの大手メディアがあなたの発言に関するネット記事を掲載したところ、大反響を呼びました。ル・フィガロ紙の記事には100件以上のコメントがつくなど、宮崎ファンを始めとする多くのフランス人が関連記事に殺到したのです。


http://www.lefigaro.fr/culture/2015/02/18/03004-20150218ARTFIG00097-hayao-miyazaki-contre-les-caricatures-de-charlie-hebdo.php


フランスにおいてアニメの、いや映画界の巨匠としての地位を確立している貴方の発言が、人々の興味を引くのは当然のことかもしれません。


ただし、今回に限っては、内容に疑問を持った人が少なくなかったということが、物議を醸している最大の理由だと言えます。


発言のどこがどう問題なのか、おこがましいとは思いつつも私なりに説明したいと思います。


まずは2つ目の発言から。


まずもって自国の政治家にやるべきであって・・・


これは事実誤認です。なぜならフランスの風刺画家は 貴方に指摘される何世紀も前から、「自国の政治家(権力者)」を風刺の対象にしてきたからです。今も昔も、自国の政治家がなによりの標的であり、風刺画の原点はここにあります。


それをまるでフランスの風刺画が、自国のことはさておき他文明だけを対象にしているかのような物言いは、それらがフランス人に受け入れられないどころか、貴方が風刺画について何も知らないのではないかという疑いまで生じさせてしまいます。


そしてそれに続く表現、


他国の政治家にやるのはうさんくさくなるだけ


この発言も、このグローバルな時代に、ましてやテロの脅威が国境を越えてやってくる時代に、お世辞にも相応しいとは言えません。特にヨーロッパの大多数の国はEUに加盟していて、近隣国の政治は自国のそれと同じくらい重要視されています。EUで決定されることを「他国の政治家が関わっているから」と批判しないメディアは皆無でしょう。


次に、多くのアンチ・シャルリーを代表しているかのようなこの発言、


異質の文明に対して、崇拝しているものをカリカチュア(風刺画)の対象にするのは間違いだ」


これも、「異質の文明」にイスラム教を含むのであれば、貴方がフランスの現状に精通していないからこそ言えたと思われても仕方ありません。なぜならイスラム教は現在のフランスでは異質ではなくなりつつあるからです。


偶然にも、一昨日の地方新聞にこのような記事が掲載されました。





P1000093







フランシュ・コンテ地方出身の19歳のフランス人が、先週、イラクで自爆テロを起こして死亡していたという内容です。(写真右:彼の両親提供 写真左:イスラム国が彼の死を伝えるために使用)


彼は、イスラム教とは全く縁のないフランス人の両親のもとに生まれました。義務教育の課程では一切の問題も起こしたことのない彼の様子が変わり始めたのが、高校2年生の頃。自宅から最も近いモスクに通うようになり、両親の知らない間にイスラム教に改宗。2013年10月、「心配しないで」という一枚のメモだけを残してシリアに向かいました。


彼の変貌は決して特異な例ではありません。イスラム国に所属する欧州人でもっとも多いのがフランス人(1000人以上=外国人戦闘員の3分の1)だと言われていて、その内訳には、移民系フランス人もさることながら、幼少期にはイスラム教とは全く関係のなかったフランス人たちも相当数含まれています。


自爆テロで死亡した19歳の少年の両親は言います。「これは誰にでも起きうることです」


彼らが仄めかす通り、フランスではイスラム教はすでに自国の問題となっています。イスラム教徒の移民が増え続け、フランス国籍を持つ2世、3世もイスラム教徒である現状に加えて、国民の一部がイスラム教を通してテロリストになっている。それらを前にして「異質の文明」などと呑気なことを言っていられるでしょうか。


テロが起きるまで、フランス政府はこの現状にはあまり触れないようにしてきました。そんな中で、警鐘を鳴らしていたのがシャルリー・エブドなのです。


風刺画は、当然笑いをとることを一番の目的としています。だから見た目はふざけた絵に見えることがあります。でも、ジャーナリストでもある彼らが人を馬鹿にするためだけに描いていると解釈するのは、大きな間違いです。


彼らの絵には必ず隠された意図があるわけですが、残念ながら、風刺画の見方を知らない人には、そういう意図があることさえ理解されません。今回のテロは、風刺画の見方を知らないテロリストが誤解して引き起こしたと言っても過言ではないのです。


生き残った風刺画家は今後もムハンマドを描き続けます。


それは挑発を目的としているのではなく、自国とイスラム教(ムハンマドの教え)があまりにも密接になっていて、描かざるを得ないからです。


風刺画は報道の一つ、メディアの一つであり、一部の人々に誤解されたり不快感を与えるからと言って事実を伝えないことは自粛を意味します。彼らが表現の自由を象徴していると言われるのは、そういうことなのです。


これらのことを踏まえ、宮崎氏にはもう一度、風刺画について考え直していただきたい、それが同じ表現者である貴方の使命であると思う次第です。



 










・・・と書いてみましたが、宮崎氏本人がこのブログを訪れる可能性はゼロに近いため、これとほぼ同じ内容の手紙をジブリ宛てに送ろうと思っています。









追記:2015年3月10日、同記事がネット新聞・日刊ベリタに転載されました。

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201503102218542








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